四つまみめ ロンドンの珍行事

今回は、和やかな連載をゆるがす強烈な記事をひとつご紹介します。マツモトさん、すごく楽しんで写真を撮っているのがわかります。
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 6月8日土曜日、「Naked Bike Ride London」というイベントがロンドン市内で開かれた。
このイベントは他の都市でも開かれており、すべてのイベントを総括する名前は「World Naked Bike Ride」という。

 私はこの日に2回もこのイベントの参加者に出くわしたのだが、1回目、全部で6つある出発地点のうちの1つ、リージェンツパークという、バラの時期にはたくさんの花が見られることで知られている公園で彼らを発見したときは度肝を抜かれた。

 ロンドンの公園は芝生と樹木で覆われているので、基本は緑色である。その緑の映える公園内に肌色の塊が見えるのだ。参加者はおおむね全裸、中にはご丁寧にパンツだけを履いているひとや、体にフランスの国旗を書いているひと、仮面だけ付けているカップル、そして、半数ほどはメッセージを自分の体や自転車にかかげるなど様々である。その他にもなぜか全身を緑に塗り、植物の妖精よろしくおしゃれに振る舞う女性や、陰部を金のラメで彩っている男性もいた。

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 さて、このイベント、何のために開かれているか、というと、自転車乗りの交通安全、そして、自転車はオイルフリーの交通手段であることをアピールするためである。参加者の半数はなんらかのメッセージを体に書いていると前述したが、彼らは主に背中や太もも、または自転車につける旗に「OIL(原油)=WAR(戦争)」「BIKE NEEDS NO OIL(自転車に原油はいらない)」「STOP KILLING BY BIKE(自転車による交通事故を止めよう)」と掲げ、環境、平和、交通安全に言及していた。

 ちなみに出発地点であまりの衝撃に参加者の写真を撮っていると、一人の全裸のお爺さんが近づいてきて一緒に写真を撮ろうかと提案された。そのお爺さんに今年で何回目の参加かと尋ねると3回目だという。結局、仲良く肩を組んで写真に写る羽目になったのだが、見物人に声をかけることにだいぶ慣れている様子だったので、参加する毎にそうして観光客へ思い出の品を残しているのだろう。

 2回目に集団に出くわしたのはマーケットのあるコヴェントガーデンだった。17時のことである。
途中で、他の出発地点の集団と合流したらしくとても大きな団体と化していた。

 ここでは私は2回目なので驚くことも無かったが、私の隣にいたおばあさんは驚嘆のあまり何かが切れてしまったのか始終笑っていた。他の野次馬にしてもそうである。中には不快に思う人もいただろうが、なにしろ参加者自身が喋ったり写真を撮り合ったりと楽しそうなので、自然と見物人も楽しい気分になる。デモさながらの列の周りは参加者にエールを送る人や一緒に写真を撮る人で賑やかだった。

 これは、街中で裸になるという非日常性と社会に対する提案を含んだ、センセーショナルで人々の記憶に残させるという意味ではよく出来た企画である。そして、企画者の実施までの苦労を考えると気が遠くなる。しかしもしこれを日本でやるとしたら、世間様に向けてたくさんの規制がかかってしまい、元の物からは想像できないほどとんでもなくマイルドなイベントになってしまうだろう。
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 イギリスではどんなに変な格好をしていても誰も気にとめないから気まずくならない、というが、その究極の在り方を見せつけられたイベントだった。

(文・松本麻美)