#1

 
 
 
波の音を初めて聞いたのはいつ?
 
 
 
波の光を初めて見たのはいつ?
 
荒れ地の、海岸の、山裾の、丘の上の
 
 
 
都会は巨大なレンズの底
 
すきとおった気配が風のように通過する
 
のどが潰れるほど風にむかって吠えて
 
 
 
獣たちがやってくる
 
波に乗って次々と訪れる
 
悲しみを知らない強い獣たちが
 
上陸して、二千年前のどんぐりや蛤に群がっている
 
 
 
ちらちらと踊る光の逆走だ
 
しずかに降る黒の中を転びそうになって走ってくる
 
青いきのこのように夜がたくさん生えてきた
 
歌舞なく悲哀なく、目には賑やかなお祭りだ
 
星月夜、波打ち際のカレンダー
 
 
 
(管啓次郎)
管啓次郎(すが・けいじろう)
詩人、比較文学者。この数年はバルカン半島との縁が深い。エッセー集に『斜線の旅』(インスクリプト、第62回読売文学賞)、詩集に『Agend’Ars』4部作(左右社)、『数と夕方』など。

暁方ミセイ(あけがた・みせい)
詩人。横浜の北部、田園と新興住宅地の狭間育ち。既刊詩集に『ウイルスちゃん』(思潮社、第17回中原中也賞受賞)、『ブルーサンダー』(思潮社)など。詩作の他に、エッセイの執筆や朗読活動も行っている。

石田瑞穂(いしだ・みずほ)
詩人。見沼の田園、東京、ブールジュをゆききする。最新詩集に『耳の笹舟』(思潮社、第54回藤村記念歴程賞受賞)。詩人のデジタルアーカイブ・プロジェクト、獨協大学「LUNCH POEMS@DOKKYO」ディレクターもつとめている。公式ホームページ「Mizuho’s Perch」。

3名に大崎清香を加えた共同詩集に、『連詩 地形と気象』(左右社)がある。