#5

 
 
 
水鳥が飛び立つようすを見た?
 
 
 
鳥たちは淡水と海水を意識していると思う?
 
味わいかな、それともそれは波の立ち方、水のねばり?
 
 
 
私は海岸の雨の七月に立って
 
心を分断するコンクリートの壁を見ていた
 
見たくないものをすべて視野から追い出すのか
 
 
 
大きな地質学的な愛と慈悲を
 
すべて出来損ないのフィクションにしようとする連中の
 
首をひとつひとつ丁寧に狩って
 
死んでゆく藤壷たちにささげるか
 
 
 
けれども悲哀を転換せよと命令する菩薩がいる
 
ああ、ああ、伸びやかな命を何が体現するの?
 
われわれの知らない広大な海中で
 
いるかたちが全力で通信を試みている
 
この死んだ海を追悼せよ、そのために鬼火を撮影せよ
 
 
(管啓次郎)

管啓次郎(すが・けいじろう)
詩人、比較文学者。この数年はバルカン半島との縁が深い。エッセー集に『斜線の旅』(インスクリプト、第62回読売文学賞)、詩集に『Agend’Ars』4部作(左右社)、『数と夕方』など。

暁方ミセイ(あけがた・みせい)
詩人。横浜の北部、田園と新興住宅地の狭間育ち。既刊詩集に『ウイルスちゃん』(思潮社、第17回中原中也賞受賞)、『ブルーサンダー』(思潮社)など。詩作の他に、エッセイの執筆や朗読活動も行っている。

石田瑞穂(いしだ・みずほ)
詩人。見沼の田園、東京、ブールジュをゆききする。最新詩集に『耳の笹舟』(思潮社、第54回藤村記念歴程賞受賞)。詩人のデジタルアーカイブ・プロジェクト、獨協大学「LUNCH POEMS@DOKKYO」ディレクターもつとめている。公式ホームページ「Mizuho’s Perch」。

3名に大崎清香を加えた共同詩集に、『連詩 地形と気象』(左右社)がある。