#8

 
 
どの場面においても
 
 
 
知りうる手数を尽くし
 
ほかの生き物に馴染むように
 
 
 
シリアルを入れたボウル
 
牛乳を注ぐまえに
 
固化した蜂蜜を擦り付ける
 
 
 
あらゆる語り手は凡庸で
 
壮大な事象に興味がない
 
「共鳴を前提とする緻密な計画を」
 
自嘲気味の音読みがうわつく
 
 
 
河川で拾った石を庭に置いて
 
ここに場面をつくろうとする
 
平行脈の草影を往き来する羽虫のつがいに
 
背景として足首を提案する
 
すぐにやむ雨を抜けてくる薄い光のなか
 
 
(佐藤文香)

管啓次郎(すが・けいじろう)
詩人、比較文学者。この数年はバルカン半島との縁が深い。エッセー集に『斜線の旅』(インスクリプト、第62回読売文学賞)、詩集に『Agend’Ars』4部作(左右社)、『数と夕方』など。

暁方ミセイ(あけがた・みせい)
詩人。横浜の北部、田園と新興住宅地の狭間育ち。既刊詩集に『ウイルスちゃん』(思潮社、第17回中原中也賞受賞)、『ブルーサンダー』(思潮社)など。詩作の他に、エッセイの執筆や朗読活動も行っている。

石田瑞穂(いしだ・みずほ)
詩人。見沼の田園、東京、ブールジュをゆききする。最新詩集に『耳の笹舟』(思潮社、第54回藤村記念歴程賞受賞)。詩人のデジタルアーカイブ・プロジェクト、獨協大学「LUNCH POEMS@DOKKYO」ディレクターもつとめている。公式ホームページ「Mizuho’s Perch」。

3名に大崎清香を加えた共同詩集に、『連詩 地形と気象』(左右社)がある。