#11

 
 
Springbankっていうさ
 
 
 
潮と煙の馨が強烈に響く酒を呑んで
 
英国詩流修辞でいうところの
 
 
 
血液のなかの母語を地獄まで焼いていたら
 
じつにひさしぶりに
 
秕の韻律がきこえてきた
 
 
 
魂の闇夜の月は硝酸銀に
 
うかぶ煤けたゼロで
 
壁や有刺鉄線のむこうから
 
狼たちが跫でブルースを歌う
 
 
 
八甲田山の森は非情だった
 
葉には密かな結晶だけがみちていて
 
樹氷は涙とは無縁の世界の骨
 
流氷のカウンターに 本が
 
ひらかれたまま伏せられていて
 
 
   (石田瑞穂)
管啓次郎(すが・けいじろう)
詩人、比較文学者。この数年はバルカン半島との縁が深い。エッセー集に『斜線の旅』(インスクリプト、第62回読売文学賞)、詩集に『Agend’Ars』4部作(左右社)、『数と夕方』など。

暁方ミセイ(あけがた・みせい)
詩人。横浜の北部、田園と新興住宅地の狭間育ち。既刊詩集に『ウイルスちゃん』(思潮社、第17回中原中也賞受賞)、『ブルーサンダー』(思潮社)など。詩作の他に、エッセイの執筆や朗読活動も行っている。

石田瑞穂(いしだ・みずほ)
詩人。見沼の田園、東京、ブールジュをゆききする。最新詩集に『耳の笹舟』(思潮社、第54回藤村記念歴程賞受賞)。詩人のデジタルアーカイブ・プロジェクト、獨協大学「LUNCH POEMS@DOKKYO」ディレクターもつとめている。公式ホームページ「Mizuho’s Perch」。

3名に大崎清香を加えた共同詩集に、『連詩 地形と気象』(左右社)がある。