#13




琥珀色の蜜が大気の海になって




私たちの動作は大変緩慢になりました

時間は蜜の粘りにねっとりと引き留められる




鰭脚類の化石は陽気なタイムトラベラー

落命したことさえ忘れてのっそりと這ってます

その胃石の表面には太古の環形動物の痕




ふたたび上陸が主題化された

あしかになろうか犬になろうか

山で生きようか浜で生きようか

多少の失敗があってもがっかりしないでね




琥珀色の蜜の中を渡り鳥の群れが泳いでいる

シベリア鉄道追いかけてアラスカ鉄道追い抜いて

夜もぼんやり明るい光を浮かべた

蜜色の空のメシャスベを渡って行きます

未来は過去、過去は未来、時間は大空の巨大な環形動物




(管啓次郎)
管啓次郎(すが・けいじろう)
詩人、比較文学者。この数年はバルカン半島との縁が深い。エッセー集に『斜線の旅』(インスクリプト、第62回読売文学賞)、詩集に『Agend’Ars』4部作(左右社)、『数と夕方』など。

暁方ミセイ(あけがた・みせい)
詩人。横浜の北部、田園と新興住宅地の狭間育ち。既刊詩集に『ウイルスちゃん』(思潮社、第17回中原中也賞受賞)、『ブルーサンダー』(思潮社)など。詩作の他に、エッセイの執筆や朗読活動も行っている。

石田瑞穂(いしだ・みずほ)
詩人。見沼の田園、東京、ブールジュをゆききする。最新詩集に『耳の笹舟』(思潮社、第54回藤村記念歴程賞受賞)。詩人のデジタルアーカイブ・プロジェクト、獨協大学「LUNCH POEMS@DOKKYO」ディレクターもつとめている。公式ホームページ「Mizuho’s Perch」。


3名に大崎清香を加えた共同詩集に、『連詩 地形と気象』(左右社)がある。