#21

夜が明けて右耳に太陽が飛びこんだ



夏みかん色の光が卵黄のように

とろとろと左耳から流れ出す



世界は影のない踊り場

悲しみもなく道もなく

思考が冷たい水たまりのように光っている



日焼けした肌がおもしろいくらい剝けてきた

眠れない脳がくるくる旋回する

砂地に掘った穴から小さな蟹の群れが湧き出す

彼女は都市計画を3Dプリンタで説明する



Psycheよ、心の浮き袋をよく水洗いしてください

昼と夜の交替がぐんぐん加速する

平安の海に船出する筏の上の篝火に

見たこともない巨大な烏賊が集まってくるんだ

かれらの目はVenusのための精巧なバイオ義眼

  (管啓次郎)
管啓次郎(すが・けいじろう)
詩人、比較文学者。この数年はバルカン半島との縁が深い。エッセー集に『斜線の旅』(インスクリプト、第62回読売文学賞)、詩集に『Agend’Ars』4部作(左右社)、『数と夕方』など。

暁方ミセイ(あけがた・みせい)
詩人。横浜の北部、田園と新興住宅地の狭間育ち。既刊詩集に『ウイルスちゃん』(思潮社、第17回中原中也賞受賞)、『ブルーサンダー』(思潮社)など。詩作の他に、エッセイの執筆や朗読活動も行っている。

石田瑞穂(いしだ・みずほ)
詩人。見沼の田園、東京、ブールジュをゆききする。最新詩集に『耳の笹舟』(思潮社、第54回藤村記念歴程賞受賞)。詩人のデジタルアーカイブ・プロジェクト、獨協大学「LUNCH POEMS@DOKKYO」ディレクターもつとめている。公式ホームページ「Mizuho’s Perch」。

3名に大崎清香を加えた共同詩集に、『連詩 地形と気象』(左右社)がある。