#26

存在しない路線に電車が乗り入れ



忘れたほうの過去へ向かい走っていくのは

臨時ライナーだ 黄色いライトの



窓の外には飼育していた水生生物

おびただしいめだかやどじょうと

その胃から溢れるたくさんのたくさんの糸蚯蚓



液の合間でアメーバが輪郭をちらちら現し燃えるような

この冷たい闇の六月の川底に

生命が吐き戻されるその不健全さ

悲鳴をあげている列車の軋りでぐったり項垂れれば



たちまちひゅうっとぞ龍に変わるそのライナー

雨乞いの里にうねる吉兆の黒鱗

濁流の水にもまた新しい栄養素を運び

許す こと をこえて渦巻くつる草文様

どこかにわたしの片割れだっているはずだ



  (暁方ミセイ)
管啓次郎(すが・けいじろう)
詩人、比較文学者。この数年はバルカン半島との縁が深い。エッセー集に『斜線の旅』(インスクリプト、第62回読売文学賞)、詩集に『Agend’Ars』4部作(左右社)、『数と夕方』など。

暁方ミセイ(あけがた・みせい)
詩人。横浜の北部、田園と新興住宅地の狭間育ち。既刊詩集に『ウイルスちゃん』(思潮社、第17回中原中也賞受賞)、『ブルーサンダー』(思潮社)など。詩作の他に、エッセイの執筆や朗読活動も行っている。

石田瑞穂(いしだ・みずほ)
詩人。見沼の田園、東京、ブールジュをゆききする。最新詩集に『耳の笹舟』(思潮社、第54回藤村記念歴程賞受賞)。詩人のデジタルアーカイブ・プロジェクト、獨協大学「LUNCH POEMS@DOKKYO」ディレクターもつとめている。公式ホームページ「Mizuho’s Perch」。

3名に大崎清香を加えた共同詩集に、『連詩 地形と気象』(左右社)がある。