#29

「はためく」とは風との同期



きみの体もぺらぺらと薄くなって

風と風のすきまを泳いでいくんだって



「波多メク」と剛造さんなら書くかもしれないね

水の波、光の波、風の波、心の波

数えきれない数に増殖して



Gozoとはポルトガル語で「私は楽しむ」

ありのままにはためき、世界を肯定しているのに

ときどき海がべったりと凪いで

盛者必衰の理をあらわす



きみの量子論が決定を拒んでいる

シュレディンガーの猫が一匹なら猫は生死を同時に体験する

二匹なら生生/生死/死生/死死かな

では猫の群れならどうなる 教えてよ

「あのあと私たちはなぜあんなに明るい気持ちでいられたの?」



    (管啓次郎)
管啓次郎(すが・けいじろう)
詩人、比較文学者。この数年はバルカン半島との縁が深い。エッセー集に『斜線の旅』(インスクリプト、第62回読売文学賞)、詩集に『Agend’Ars』4部作(左右社)、『数と夕方』など。

暁方ミセイ(あけがた・みせい)
詩人。横浜の北部、田園と新興住宅地の狭間育ち。既刊詩集に『ウイルスちゃん』(思潮社、第17回中原中也賞受賞)、『ブルーサンダー』(思潮社)など。詩作の他に、エッセイの執筆や朗読活動も行っている。

石田瑞穂(いしだ・みずほ)
詩人。見沼の田園、東京、ブールジュをゆききする。最新詩集に『耳の笹舟』(思潮社、第54回藤村記念歴程賞受賞)。詩人のデジタルアーカイブ・プロジェクト、獨協大学「LUNCH POEMS@DOKKYO」ディレクターもつとめている。公式ホームページ「Mizuho’s Perch」。

3名に大崎清香を加えた共同詩集に、『連詩 地形と気象』(左右社)がある。