#35

めだまの夜明けをのぞいてごらん


 
秋のしゃぼん玉保存器

ヒマワリたちの亡霊の痕に


 
セイタカアワダチソウが群落する

いったいどっちが幽霊なのか

昭和弐拾年 粕壁の加藤楸邨が


 
咲きぞめの萩は糠くさいなんて書いて 北のおかあさんの

糠床の香が蘇る 白菜 野菜屑 和辛子 いりこ 鷹の爪

ビール 古釘 煮汁 荒巻鮭の頭まで 鮭は乳酸菌と酵母

に分解され 肉も眼球も骨もきれいに溶けて 消えていた


 
夏の光線も秋の白紙も

散って 散って 散って

宇宙には芥子粒ひとつ

死はない

世界よ 発酵せよ


   (石田瑞穂)
管啓次郎(すが・けいじろう)
詩人、比較文学者。この数年はバルカン半島との縁が深い。エッセー集に『斜線の旅』(インスクリプト、第62回読売文学賞)、詩集に『Agend’Ars』4部作(左右社)、『数と夕方』など。

暁方ミセイ(あけがた・みせい)
詩人。横浜の北部、田園と新興住宅地の狭間育ち。既刊詩集に『ウイルスちゃん』(思潮社、第17回中原中也賞受賞)、『ブルーサンダー』(思潮社)など。詩作の他に、エッセイの執筆や朗読活動も行っている。

石田瑞穂(いしだ・みずほ)
詩人。見沼の田園、東京、ブールジュをゆききする。最新詩集に『耳の笹舟』(思潮社、第54回藤村記念歴程賞受賞)。詩人のデジタルアーカイブ・プロジェクト、獨協大学「LUNCH POEMS@DOKKYO」ディレクターもつとめている。公式ホームページ「Mizuho’s Perch」。

3名に大崎清香を加えた共同詩集に、『連詩 地形と気象』(左右社)がある。