#40

岸辺に寄すおも影をふせ



埠頭にいま

君と立つ



この湾は 江戸よりの引き

ひとの希求のいやしさよ

水を分け 波線を押して



僕らはもはやおしだまり

ありあう宵寝に 想起をゆする

いつの日か

君を美称で呼びたかった



埠頭には 潮のおとがしきりに垂れ

街はとおく ネオンはまどろみ

二人しかいないのかもしれなかった

「わたしが死んでもこの海は反復してゆく」

その言葉が たとえ愛ではなくても



  (永方佑樹)

管啓次郎(すが・けいじろう)
詩人、比較文学者。この数年はバルカン半島との縁が深い。エッセー集に『斜線の旅』(インスクリプト、第62回読売文学賞)、詩集に『Agend’Ars』4部作(左右社)、『数と夕方』など。

暁方ミセイ(あけがた・みせい)
詩人。横浜の北部、田園と新興住宅地の狭間育ち。既刊詩集に『ウイルスちゃん』(思潮社、第17回中原中也賞受賞)、『ブルーサンダー』(思潮社)など。詩作の他に、エッセイの執筆や朗読活動も行っている。

石田瑞穂(いしだ・みずほ)
詩人。見沼の田園、東京、ブールジュをゆききする。最新詩集に『耳の笹舟』(思潮社、第54回藤村記念歴程賞受賞)。詩人のデジタルアーカイブ・プロジェクト、獨協大学「LUNCH POEMS@DOKKYO」ディレクターもつとめている。公式ホームページ「Mizuho’s Perch」。

3名に大崎清香を加えた共同詩集に、『連詩 地形と気象』(左右社)がある。