#48


 窓



 息 継ぎ 息 継ぎ

 くぐもった イコン



 頭上に一羽の鳩を飼い 瞳に金の魚を泳がせ

 二匹の蛇が心臓で絡み合い 海の水を滴らせ

 陸に上がった何者かの足跡が 点々と続く冬の浜辺 ――




 1+1=1 二千年来 謎は 謎のまま

 1=1-1 誰も 何者かの姿を 知る術もなく

 たがいの胸に 凍えた月を抱き 震え かたく身を寄せ合う

 舟をなくした男 歌をなくした女 打ち上げられた石の花よ




 1=1 誰が ふたたび

 花をひらかせ 月を上らせようというのか?

 イコン 窓 …… 石の肌理を瞬時に読み解くあの

 ミケランジェロ ――

 神の如きノミの一撃で!



 (伊武 トーマ)
管啓次郎(すが・けいじろう)
詩人、比較文学者。この数年はバルカン半島との縁が深い。エッセー集に『斜線の旅』(インスクリプト、第62回読売文学賞)、詩集に『Agend’Ars』4部作(左右社)、『数と夕方』など。

暁方ミセイ(あけがた・みせい)
詩人。横浜の北部、田園と新興住宅地の狭間育ち。既刊詩集に『ウイルスちゃん』(思潮社、第17回中原中也賞受賞)、『ブルーサンダー』(思潮社)など。詩作の他に、エッセイの執筆や朗読活動も行っている。

石田瑞穂(いしだ・みずほ)
詩人。見沼の田園、東京、ブールジュをゆききする。最新詩集に『耳の笹舟』(思潮社、第54回藤村記念歴程賞受賞)。詩人のデジタルアーカイブ・プロジェクト、獨協大学「LUNCH POEMS@DOKKYO」ディレクターもつとめている。公式ホームページ「Mizuho’s Perch」。

3名に大崎清香を加えた共同詩集に、『連詩 地形と気象』(左右社)がある。