埼玉県浦和市(現さいたま市)生まれ。1992年東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了。1994年から2000年までアメリカ、ワシントン州に居住。本や文房具、郵便物など、言葉や文字との関わりをもち、しばしば自身の知覚や記憶を宿した私物に精緻で反復的な手作業をほどこした彫刻やオブジェ、コラージュを手がける。その制作手法は偶然や無意識の作用を介在させ、削る、折る、切り抜く、刺繍するといった行為がなかば衝動的に始められ、繰り返されることで、事物が変容し、異なる姿のもとに転生したものが作品として現れる。また、福田は美術の制作と並行して、始まりから読んでも終わりから読んでも同音となる、回文と呼ばれる文章を書き続けており、これまでに11冊の回文集を発表している。「世界は言葉でできている」*と考える作家にとって、美術と回文による言葉と世界をめぐるその探求は、根底において分ちがたく結びついている。
福田尚代「片糸の日々」『ひかり埃のきみ 美術と回文』平凡社、2016年、p.189