最後の瞽女・小林ハルの知られざる素顔 弟子がはじめて語る注目のノンフィクション
書誌情報
- 定価
- 1,980 円(税込)
- 電子書籍価格
- 1,980 円(税込)
- ジャンル
- 芸術・デザイン・写真
- 刊行日
- 2021年10月10日
- 判型/ページ数
- 四六判 並製 264ページ
- ISBN
- 978-4-86528-044-9
- Cコード
- C0095
- 装幀・装画
- 鈴木成一デザイン室/装幀、山本由実/装画
内容紹介
生後100日で失明、5歳で瞽女の親方に弟子入り。以来、70年あまりにわたって瞽女として商売を続け、その後も芸と心を伝え続けた小林ハル。
たまたま聴いた唄声が忘れられずに弟子入りした著者は、小林ハルの稽古場で、「瞽女とはなにか」「自分のさずきもん(人生でさずかったもの)とはなにか」を学んでいく。
「おれがもうちっと若かったらおめと旅したらよかったろうの」
「そうですねぇ、私、もう少し早く生まれるべきでしたねえ」
思いのままに、突然の入門。
瞽女唄の即興性にはじめから大混乱。
もうひとりの瞽女、杉本シズさんとの出会い。
ハルさんの忘れられない言葉、その唄と芸のこと。
そして別れ──
瞽女の芸の真髄、これまで語られてこなかった小林ハルの最晩年を、真摯な目線で切り取ったノンフィクション。
*YouTubeで視聴可能な参考音源リスト付き
声がどうとか唄や三味線がうまいとか、素敵なメロディだなとか、そのような印象ではありません。ただひたすら「ここにこんなものが残っていたんだ」という驚きでした。
発声も、音程のとり方・移り方も、三味線も、その人自身が発している存在感そのものまで、まるごとすべてがそれまで経験したことのないものだったのです。自分が知っていたあらゆる音楽芸能とかけ離れたものであるように感じられました。五線譜や文字、知識や技術でいじられていない根源的な魅力をもった世界……ほかの世界の価値観や毀誉褒貶を拒否しているかのような。神聖なものを目の前にしているような、不思議な感覚でした。
(「第一話 師匠・小林ハルとの出会い」より)