「海行きたいね」と彼女は言った

「海行きたいね」と彼女は言った

燃え殻のベストセラー恋愛小説が映像化! 映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』(監督:森義仁 出演:森山未來、伊藤沙莉 原作:燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮文庫刊) 2021年11月5日よりNetflix&劇場公開)スピンオフフォトストーリー

書誌情報

定価
1,980 円(税込)
電子書籍価格
1,980 円(税込)
ジャンル
刊行日
2021年11月05日
判型/ページ数
B6判変形 並製 144ページ
ISBN
978-4-86528-048-7
Cコード
C0074
装幀・装画
熊谷菜生/装丁

内容紹介

1996年横浜────今でも、似た匂いがすると、この日のことを思い出す。
その日は目当の映画もやっていないかったし、喫茶店のケーキは冷凍だったし、せっかくの海も曇り空だったのに彼女は「なんか、今日はついてるね」と笑って、僕の手を握った。

もう会うことはかなわない、自分の運命を大きく変えてくれた“最愛の人”との忘れられない一日。原作・映画では描かれなかった、あの日の記憶をたどるPhoto Movie 伊藤沙莉主演「あの日はなんでか全部がよかった──1996年横浜」に加え、原作者・燃え殻によるエッセイ2篇を収録。

【YouTubeで森義仁監督によるプロモーション動画公開中】

動画制作:森義仁、岩間徳裕/曲:ハルカ(ハルカトミユキ)『BLUE FRIDAY』
出演:伊藤沙莉、写真:木村和平、脚本:高田亮
Photo Movie「あの日はなんでか全部がよかった────1996年横浜」

 



伊勢佐木長者町駅前で待ち合わせた僕らは黄金町の映画館ジャック&ベティに向かった。 「STUDIO VOICE」だか「CUT」だか忘れたけど、雑誌で押井守が影響を受けた映画のことを知った彼女は、鈴木清順の特集上映を楽しみにしているようだった。 「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」が大好きな彼女は、ついこないだまで邦画はアニメ以外見る価値なしって言ってたのに、今日は古典を知る大切さについて熱弁をふるっていた。
「もし、好きな人がいたら、その人を作ったもののことも好きになれなきゃウソだと思う」 その通りだ。十五年たった今も、僕はそう思う。 けっきょく鈴木清順特集は来週からで、僕らはただ街を歩き続けた。
大岡川の川沿い、石川町の坂、古い喫茶店、夕方の山下公園。 今でも、似た匂いがすると、この日のことを思い出す。
その日は、なんでか、全部がよかった。

目次

『「海行きたいね」と彼女は言った』に関する情報

著者プロフィール

燃え殻 (モエガラ)

1973年生まれ、神奈川県出身。小説家・エッセイスト・テレビ美術制作会社企画。2017年『ボクたちはみんな大人になれなかった』で小説家デビュー。著書に小説『これはただの夏』、エッセイ『すべて忘れてしまうから』『夢に迷って、タクシーを呼んだ』『相談の森』がある。

伊藤沙莉 (イトウ・サイリ)

1994年生まれ。千葉県出身。20年に第57回ギャラクシー賞テレビ部門個人賞、東京ドラマアウォード2020で助演女優賞、21年に第63回ブルーリボン賞助演女優賞、第45回エランドール賞新人賞受賞。22年1月からドラマ『ミステリと言う勿れ』が放送、主演映画『ちょっと思い出しただけ』が早春公開。著書に『【さり】ではなく【さいり】です。』。

木村和平 (キムラ・カズヘイ)

1993年生まれ。福島県出身。18年に「第19回写真『1_WALL』審査員奨励賞」を受賞。ファッションや音楽、映画などの分野で撮影を行っている。著書に『あたらしい窓』など。

高田亮 (タカダ・リョウ)

1971年生まれ、東京都出身。2011年『婚前特急』で劇場映画脚本家デビュー。14年『そこのみにて光輝く』(14)でキネマ旬報ベスト・テン脚本賞、ヨコハマ映画祭脚本賞を受賞。脚本作品に『武曲 MUKOKU』『まともじゃないのは君も一緒』(21)など。

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