日本人論争 大西巨人回想

先頃亡くなった戦後文学を代表する大西巨人の1996年以降のエッセイ・評論と近年のインタビューを網羅的に収載。

書誌情報

定価
9,130 円(税込)
ジャンル
刊行日
2014年06月27日
判型/ページ数
四六判 上製 800ページ
ISBN
978-4-86528-102-6
Cコード
C0090
装幀・装画
松田行正+杉本聖士/装幀

内容紹介

先頃亡くなった戦後文学を代表する大西巨人の1996年以降のエッセイ・評論と近年のインタビューを網羅的に収載。軍隊生活を経て、作家として半世紀以上日本の変遷を見続けてきた著者は、この国の現在を、そして行く末をどう見つめていたのか。本書全編をとおして「日本人」への問いが浮き上がってくるー。 『神聖喜劇』着想の経緯、自身の軍隊経験、青年期を過ごした福岡のこと、復員後の文化活動・政治活動、夢中になった映画をめぐる思い出、自作短歌の解説から浮かぶ戦前・戦中・戦後の日本。巻頭口絵では写真、自筆はがきや自筆原稿、構想ノートなどを紹介。巻末には本書刊行に際し大幅に改定を施した年譜を付す。 「いつかこの日が来ることは分かっていた。今を生きる我々が大西巨人の意志を引き継がねばならない。」──國分功一郎

目次

 口 絵 星霜—アルバムと自筆原稿から—

<第一部 要塞の日々>
 『神聖喜劇』の漫画化について/徴兵検査/召集/一兵卒の日々/軍隊生活/敗戦/野砲との出会い/野砲の魅力/空への〝守り〟/横須賀行き/書くことへの想い/非暴力の追求

<第二部 文選 一九九六—二〇一二>
 一九九六 感想/短篇小説『真珠』のこと/一犬、実に吠える/記憶力過信/肺腑つく「怪物」的小説/精神の実体に迫る歌/語の真義における最高の作物/〈嘘(非事実ないし非真実)〉をめぐって/中篇小説『精神の氷点』のこと/峯雪栄哀悼
 一九九七 仆れるまでは/コンプレックス脱却の当為/方向音痴/碑、賞などのこと/干珠・満珠の島
 一九九八 凡夫の慨嘆/『十五年間』のこと/「摘発」の劇を描け
 一九九九 あるレトリック/博多東急ホテルのこと/知的な甘え所
 二〇〇〇 山崎氏に反論する/「短切」という語のこと/谷崎潤一郎の『初昔』/庭石菖のこと/かへるで/邪道
 二〇〇一 ある悲喜劇/禁句/「古典千冊3回読め」と菊池寛/軍隊で空想した小説第一作/成句「老いては……」の真義遂行/聖武天皇の短歌一首をめぐって/二十一世紀初頭の中心課題/「はたを露骨に刺激する類の病的潔癖」について
 二〇〇二 「二律背反」を抱えて精進する/長篇小説のネット連載
 二〇〇三 D・ハメット作『血の収穫』のこと/「往復書簡」のことなど/『羽音』刊行によせて/春秋の花[漢詩篇]1/春秋の花[漢詩篇]2/春秋の花[漢詩篇]3/春秋の花[漢詩篇]4/春秋の花[漢詩篇]5/春秋の花[漢詩篇]6/歳末断想
 二〇〇四 「芸術犯」阿部和重/早春断想/敗戦直後における文学的・文化的な精神および行動の鬱勃たる様相 
 二〇〇五 春秋の花1/春秋の花2
 二〇〇六 中篇小説『縮図・インコ道理教』について/春秋の花3/「責任阻却」の論理/恥を知る者は、強い/春秋の花4/春秋の花5/春秋の花6
 二〇〇七 亡母と戯曲『風浪』とのこと/流れに抗して/一大重罪〈歴史の偽造〉/受賞のことば 
 二〇〇八 今年こそ福岡へ/作家と論争/『悪霊』
 二〇〇九 若山牧水のうた/プロレタリア詩人吉田欣一氏の逝去/綿密な労作 川村杳平著『無告のうた』/卓抜な業績/再説「わたしの天皇感覚」/大西巨人『神聖喜劇』
 二〇一〇 花田さんとの最初の縁/同志武井昭夫の永眠に関して
 二〇一一 原子力発電に思うこと
 二〇一二 吉本隆明の死に関連して/人間の本義における運命について/佐々木基一全集について

<第三部 秋冬の実 大西巨人短歌自註>
 一 いのちを惜しむ
 二 自負と傲慢
 三 昇進しない一等兵
 四 民主化する軍隊
 五 日本人の民族観 

<第四部 夏冬の草 戦後の文学と政治を語る>
 一 打ち割られた菊の御紋章
 二 日本国憲法制定から六十年

<第五部 映画よもやま話>
 「赤西蠣太」
 「阿部一族」
 「生きてゐるモレア」「明日は来らず」
 「妻よ薔薇のやうに」
 「マリヤのお雪」
 「會議は踊る」「制服の処女」
 「森の石松」
 「限りなき前進」

 大西巨人詳細年譜 齋藤秀昭編
 あとがき 大西赤人
 初出一覧
 終戦当時の対馬地図

『日本人論争 大西巨人回想』に関する情報

著者プロフィール

大西巨人 (オオニシ・キョジン)

小説家、批評家。1916年福岡県で生まれる。37年、九州大学に入学するも、マルキシズム、コミュニズムに傾倒していたため、大学を追われる。大阪毎日新聞社西部支社に勤めていた42年、召集令状が届き対馬要塞重砲兵聯隊に入隊。このときの軍隊経験をもとに、約25年かけて長篇小説『神聖喜劇』を完成させた。軍隊内部の細密な描写は歴史資料的価値も高い。代表作に『神聖喜劇』『三位一体の神話』『地獄変相奏鳴曲』『春秋の花』など。2014年3月死去。

大西赤人 (オオニシ・アカヒト)

1955年生まれ。作家、評論家、編集者。季刊誌『メタポゾン』責任編集、著作に『善人は若死にをする』など。

山口直孝 (ヤマグチ・タダヨシ)

1962年生まれ。日本近代文学研究者。二松学舎大学文学部教授。

石橋正孝 (イシバシ・マサタカ)

1974年生。東京大学教養学科卒。同大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学、パリ第8大学博士課程修了。日本学術振興会特別研究員を経て、現在立教大学観光学部助教。日本ジュール・ヴェルヌ研究会会長、フランス・ジュール・ヴェルヌ協会会報編集委員。著書に『大西巨人 闘争する秘密』(左右社、2010年)、『ジュール・ヴェルヌが描いた横浜』(共著、慶應義塾大学出版会、2010年)、『Michel Butor : à la frontière ou l’art des passages』(共著、ディジョン大学出版局、2011年)、訳書に『ジュール・ヴェルヌの世紀』(共訳、東洋書林、2009年)、『罵倒文学史』(東洋書林、2011年)、『レジスタンス女性の手記』(東洋書林、2012年)、フォルカー・デース『ジュール・ヴェルヌ伝』(水声社、2014年)など。

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