時代を自由な関係で生き抜いた金子光晴と森三千代。この途轍もないペアの生きざまを、森三千代の作品を中心に描き出す新たなる傑作評伝。
書誌情報
- 定価
- 4,620 円(税込)
- 電子書籍価格
- 4,620 円(税込)
- ジャンル
- 文芸・評論・エッセイ
- 刊行日
- 2018年06月30日
- 判型/ページ数
- 四六判 並製 416ページ
- ISBN
- 978-4-86528-201-6
- Cコード
- C0095
- 装幀・装画
- 林哲夫/装幀
内容紹介
家具一切を売り払い、
ようやく手にした十円足らずを元手に、
ふたりは足かけ四年の旅に出た
行きがかりで漂いでた日本から、アジアを伝ってパリへの遠い旅は、
はじめのうちこそ少し寂しい気もしたものの、
気楽でもあったし、悪いものではなかった──。
大正デモクラシーから、第二次世界大戦へ。
傾いてゆく時代を規格外の自由な関係で生き抜いた金子光晴と森三千代。
この途轍もないペアの生きざまを、残された森三千代の作品を中心に丹念に描き出す新たなる傑作評伝。
高校生のときにフランス語を学びはじめ、大学ではフランスの象徴派詩人ステファヌ・マラルメを研究対象に選んだ私は、かならずしも日本の詩のよい読者ではなかった。そんななかの数少ない例外が安東次男の詩だった。
第二詩集『蘭』(一九五一年、月曜書房)を、神保町の古書店で見つけたのは高校二年のときで、小遣いの二、三カ月分はしたと思う。その後も小遣いをためては、第一詩集『六月のみどりの夜わ』(一九五〇年、コスモス社)、第三詩集『死者の書』(一九五五年、ユリイカ)を手に入れた。安東の詩は言葉の意想外の組み合わせで、近代の抒情詩につらなる魅力を生み出していた。
その安東が推奨してやまないのが金子光晴だった。安東は、フランスの詩人ルイ・アラゴンやエリュアールが、対独レジスタンスのなかで書いた詩を中心に論じた『抵抗詩論 詩の創作と実践のために』(青木文庫)を一九五三年に出版し、その翌年には金子光晴との共著で、『現代詩入門 詩をつくる人に』(青木新書)を出した。これが私が金子の文章に触れた最初だった。このときから、金子光晴の状況を鋭く突いた詩に魅せられることになった。(あとがきより)