異界夫婦
戌一
妻、推薦! 「なかなかよく書けていると思います。」
書誌情報
- 定価
- 1,980 円(税込)
- 電子書籍価格
- 1,650 円(税込)
- ジャンル
- 文芸・評論・エッセイ
- 刊行日
- 2024年09月30日
- 判型/ページ数
- 四六判 並製 240ページ
- ISBN
- 978-4-86528-430-0
- Cコード
- C0095
- 装幀・装画
- 森敬太(装丁)、南阿沙美(写真)
内容紹介
妻に神性を見出し帰依した男が綴る、初のエッセイ集。
SNSで話題の夫婦の、夫側の目線で初めて語るこれまでの歩み。食えない妖怪絵師として、狐面を売って食いつないだ下積み時代、妻のピアノの才能により回り出した歯車──
これまで妖怪絵師(夫)と助手(妻)だったところ、立場が逆転。アーティスト(妻)と、妻に神性を見出しプロモーションに従事する夫という関係性に。
他のどのカップルにもなぞらえられない、奇妙で特別な信頼関係を綴る、珠玉のエッセイ集。
この本は「二匹の毒虫を同じ器に入れてみたところ、偶然毒の相性が良くて、より強い毒が生まれた」とでも喩えられそうな、まるで「蠱毒」のような我々の関係性を描いたエッセイである。──────序文より
二人の出会い
私が妖怪絵師として妖怪の絵を描いて暮らしていたころ、ふと立ち寄った絵の個展会場にて、その展示の開催作家である妻と出会った。当時の妻は音楽活動は一切行なっておらず、絵描き同士として意気投合した……ような記憶がある。しかし私より八歳も年下であることを知り、恋愛対象になるようなことはないだろうと私は考えていたが、妻は違ったようだった……。これ以上の互いの感情の機微は照れ臭いので後述するとして、程なく我が家で、その活動と寝食を共にするようになった。
しかしそこからはしばらく苦悩の日々が続く。年相応の社会経験が無い二人は、報酬の支払われない依頼ばかりだったり、支払われても低賃金で長期間こき使われたり、いわゆる下積み生活を送ることとなる。また俗にいう「表現性の違い」というもので日々衝突を繰り返し、無駄に互いを傷つけ合い、表現活動の停滞は日常生活にまで波及し、それはそれは地獄のような日々を送っていたのである。
そんな中で妻が発した「久しぶりにピアノが弾きたい」という主張。半ば投げやりになっていた私は、心許ない貯えを、思い切って中古のアップライトピアノに費やした。
そして初めて妻の演奏を聴いたとき……
【岩手日報】戌一『異界夫婦』が掲載されました