卵降る
小島なお
いてもいい、いなくてもいい 選ばれし花びら散って きみにいてほしい
書誌情報
- 定価
- 2,200 円(税込)
- ジャンル
- 詩・短歌・俳句・川柳
- 刊行日
- 2025年12月16日
- 判型/ページ数
- 四六判 上製 208ページ
- ISBN
- 978-4-86528-502-4
- Cコード
- C0092
- 装幀・装画
内容紹介
とまどいながら、後戻りのできない決断をかさねて、いま、ここに在ること。
デビュー作『乱反射』から18年後の、小島なお最新歌集。
2021年から2025年に書かれた作品から348首を収録。
〈収録短歌より〉
うなずけばすこしここから遠ざかり草のちぎれた匂いしていた
揃えれば地上の夜に繋がれる足は眠りの約束だから
ワンピースは夕べの石碑 あおく、ゆれる、花柄のわたしたちを刻んで
木の実降る径は私に続きおり卵降る日々をきみと歩めり
春原に数えきれない草戦ぎすべてを踏んで婚姻をした
この歌集に流れた時間のあいだに、いくつか大事な決断をしなければいけない場面がありました。おのずと狭まると思っていた選択肢は、年を重ねるごとに増えて、後戻りできない錘が加わってゆきました。
私は自分が女性であっても、男性であっても、どんな性別をもっていても、世界のありようにやはりとまどっていたんじゃないか、と感じることがあります。このとまどいは社会や歴史や倫理へのものではなくて、もうすこし漠然とした、ここに在ることに立ち尽くしてしまう、足元にいつも吹き渡っている不可思議についてのものです。
(「あとがき」より)
