【毎日新聞】鴻巣友季子さんによる『覚醒せよ、セイレーン』の書評が掲載されました
『毎日新聞』2023年6月10日号「今週の本棚」にて、翻訳家の鴻巣友季子さんによるニナ・マグロクリン『覚醒せよ、セイレーン』が紹介されました。
以下、一部抜粋です。
本作の大きなテーマは性加害だ。例えば欲情したアポロンに追われたダプネは木になってしまう。(中略)性暴力が起きれば被害者が責を負わされる。(中略)あのメドゥーサが化け物に変えられたのも、男神にレイプされ神殿を穢したという理由なのだ。欲情させる女がわるいという思考は男性が作りだした「ファム・ファタル」(宿命の女)という概念に繋がりいまも生き永らえているだろう。(中略)本書のもう一つの特徴は女性たちの暮らしを描くことだ。彼女たちは生理になるし、妊娠中にヨガをやり、幼子にオーガニックコットンの肌着を用意する。こうした日常の小事を、神話という“大きな物語”は抹消していた。そんな小事こそが文学の中核的題材になるのは“小”説という散文文芸が発達してからなのだろう。
素敵な書評をありがとうございました。