管啓次郎詩集 数と夕方
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意味なき数字が脳裏で明滅する
海峡を行く白い小型フェリーに
夕方の黄金の光があたって美しい
息子がこっちを見て手をふっているのもわかる
海岸にはアフリカ原産種の大木の赤い花が咲いて
それは何かを祝っているようだ
(「数と夕方」より)
われわれの生のすべての瞬間がそのときその場での地形と気象に左右されているのは、思えば驚くべきことだ。だがそれに驚きつづける人は、いったいどこにいるのだろう。
(略)
生に耐えられなくなった者たちは叫びを上げる。その叫びがつぶやきやささやきや沈黙というかたちをとる者もいる。地形と気象に対する反応が、その背景をなす。ぼくは沈黙に似た無音の情景を、文字で構成しようとした。
(あとがきより)