20世紀前半ドイツの重要女性作家が、第二次世界大戦前夜のフランクフルトを活写した傑作、ついに邦訳。

書誌情報

定価
2,750 円(税込)
ジャンル
刊行日
2022年08月30日
判型/ページ数
四六判 上製 224ページ
ISBN
978-4-86528-094-4
Cコード
C0097
装幀・装画
草苅睦子(アルビレオ)/装幀

内容紹介

第三帝国の恐怖が見え隠れする1936年のフランクフルト。 イデオロギーと生活のあいだで揺れ動く人びとのなかで、19歳のザナは、ドイツ国民の役割とじぶんの声の小ささを静かに見つめている。ささやかなしあわせが崩れ去るとき、彼女は何を選びとるのか。自由をあきらめない若者たちの決断を描く。



あらすじ
「水晶の夜」の2年前、1936年3月のフランクフルト。ヒトラー総統の来訪に沸き立つ街で、19歳のザナは兄嫁が開くパーティーの準備に奔走していた。
食い扶持を稼ぐためにナチスにおもねらざるをえない小説家の兄、愛と夢に生きる兄嫁、美しい友人とそのユダヤ系の恋人、仕事を干された反ナチのジャーナリストに、親衛隊や突撃隊の青年たち。ザナの周りの人々は、それぞれの生活と思想を守るのに精一杯だ。
パーティーの夜、恋人フランツがケルンからザナを訪ねてくる。ある凶報とともに……。

20世紀前半のドイツを代表する女性作家が、ナチスが台頭する瞬間をリアルタイムで描いた群像劇。



フリーアナウンサーの宇垣美里さんによる書評「混乱する世界と少女の強さ」(10月22日産経新聞朝刊掲載)
梅田 蔦屋書店 河出真美さんによるレビュー「恐怖の国の希望について」
担当編集によるコメント

【週刊読書人】石井香江さんが『この夜を越えて』書評掲載
【産経新聞】宇垣美里さんが『この夜を越えて』をご紹介
【労働新聞社】「本棚を探索」三宅香帆さんが『この夜を越えて』をご紹介

目次

この夜を越えて
解説 『この夜を越えて』と著者イルムガルト・コインについて
訳者あとがき

『この夜を越えて』に関する情報

著者プロフィール

イルムガルト・コイン (コイン、イルムガルト)

ドイツの作家。1905年、ベルリン生まれ。ケルンで育ち、俳優を志したのち、執筆業に転向する。1931年に『オフィスガールの憂鬱──ギルギ、わたしたちのひとり』(原題Gilgi eine von uns、関西大学出版部)、1932年に『人工シルクの女の子』(原題Das Kunstseidene Mädchen、同)を上梓し、ベストセラー作家に。1933年にナチスが政権を握ると、反体制作家とされて迫害を受け、オランダへ亡命して、本書を含む多数の小説やラジオドラマの執筆を続けた。1982年没。

田丸理砂 (タマル・リサ)

ドイツ文学者、フェリス女子大学国際交流学部教授。首都大学東京で博士号(文学)を取得。おもにワイマール共和国時代の女性と表現について研究している。著書に『髪を切ってベルリンを駆ける!ワイマール共和国のモダンガール』(フェリス女学院大学2010.9)、『「女の子」という運動――ワイマール共和国末期のモダンガール』(春風社2015.8)ほか多数。

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