【週刊読書人】柿内正午さんによる『覚醒せよ、セイレーン』の書評が掲載されました

【週刊読書人】柿内正午さんによる『覚醒せよ、セイレーン』の書評が掲載されました

2023年8月18日付の『週刊読書人』にて、文筆家の柿内正午さんのニナ・マグロクリン『覚醒せよ、セイレーン』の書評が掲載されました。

以下、一部抜粋です。

ほんの数行の詩から着想され豊かなディティールで彩られる短編もあれば、数百行にわたる複数のエピソードを圧縮したようなものもある。舞台設定は多様で、神話時代のような幻想的な作品があるかと思えば、神々がメールを駆使する姿やバンド活動に勤しむ様子も描き出される。文体も多彩だ。戯曲風のものもあれば、歌詞カードのようなもの、文字のレイアウト自体で語るようなビジュアル表現まで織り交ぜられている。そのうえで全てのエピソードは一貫して題に掲げられたひとりの女の一人称で記述される。彼女たちの言葉は鮮やかでそれぞれの固有性を滲ませている。翻訳の語彙の選定も見事で理知的な軽妙さを醸し出す。だからこそ語られる内容の凄惨さがいっそう際立ってくる。神話の女たちはその多くが身勝手な神によって蹂躙され、家父長制の価値体系の中で理不尽に罰せられる。何人も、何人も。それぞれの個性は女であるだけで「どれも同じような話」に塗り潰されていく。しかし女たちの声の具体性はそのような安易の定型化をもたしかに拒んでもいる。(中略)

『覚醒せよ、セイレーン』は、この数千年でもっとも変わらずあり続けているものは、まずなにより性を取り巻く暴力と虐待であることを、それこそ幾つもの姿へと転身を繰り返しながら、あくまで彼女たちの声で示そうとする。

 

素敵な書評をありがとうございました。

住所
〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷3丁目55-12
ヴィラパルテノンB1
電話番号
(編集)03-5786-6030
(営業)03-5786-6031
ファックス
(共通)03-5786-6032
メール
info@sayusha.com
©   Sayusha All Rights Reserved.