私たちのなかの自然 ユング派心理療法から見た心の人類史

都市で疲れた心の地層に迫る心理療法家たちのフィールドワーク

書誌情報

定価
3,300 円(税込)
電子書籍価格
3,300 円(税込)
ジャンル
刊行日
2022年03月30日
判型/ページ数
四六判 並製 368ページ
ISBN
978-4-86528-070-8
Cコード
C0011
装幀・装画
細野綾子/装幀

内容紹介

狩猟・採集・農耕の時代から現在、都市に暮らす私たちの心にまで残っているもの。
その心性の揺らぎや不安こそが、私たちの「生きづらさ」の底にあるのではないか。
自然と向き合い自然のなかで生きてきた人類史的時間に目を向けた臨床心理学者たちが現代社会の心性を探る。
魂において私たちがいかにして〈人間〉となったのかを解き明かす、現代ユング派を代表するW・ギーゲリッヒの重要論文「殺害」収録。


 

人間の創り出した都市生活は、快適に生きていく工夫に満ちている。だが、心はなぜか都市生活で疲弊するらしい。そうした訴えを日々耳にして、どうすれば心を疎かにせずに、この都市で生きていけるのかを私たちは考えるようになった。
(猪股剛「はじめに」より)

 

目次

はじめに 新しい自然との関わりを探して 猪股剛
第1章 いのちの価値と心理療法 兼城賢志
第2章 都市生活者の風景イメージ 自然体験から浮き彫りになる現代意識の多層性 宮澤淳滋
第3章 自然について考えていったら山伏や採集者になってしまった話 成瀬正憲
第4章 心理面接の中にあらわれる自然 自然と心の繋がり、偶然性と自然の力 村田知久
第5章 動き続ける現代の心 日本昔話「おむすびころりん」をヒントとして 猪股剛
第6章 野生からの呼び声 心理療法と身体、殺害、そして踊ること 西山葉子
第7章 殺害 魂からの暴力について ヴォルフガング・ギーゲリッヒ
おわりに 自然との対話から 河西直歩

コラム
籠り(長堀加奈子)
バーチャル時代の狩人たちへ(河西直歩)
収穫祭(鹿野友章)
石原シノさんの姿(長堀加奈子)
音楽家ジョン・ケージの茸と毒(植田静)
狩猟と血と女性(河西直歩)

『私たちのなかの自然 ユング派心理療法から見た心の人類史』に関する情報

著者プロフィール

猪股剛 (イノマタ・ツヨシ)

1969年生まれ、ユング派分析家、臨床心理士/公認心理師。
帝塚山学院大学准教授。精神科や学校臨床において実践に携わるとともに、アートやパフォーマンスの精神性や、現代の心理の深層を思索することを専門としている。著書に『心理学の時間』(単著、日本評論社)、『遠野物語 遭遇と鎮魂』(共著、岩波書店)、『ホロコーストから届く声 非常事態と人のこころ』『私たちのなかの自然 ユング派心理療法から見た心の人類史』(編著、左右社)、訳書に『近代心理学の歴史』『C・G・ユングの夢セミナー パウリの夢』(いずれもC・G・ユング著、創元社)、『ユングの神経症概念』『仏教的心理学と西洋的心理学』(いずれもW・ギーゲリッヒ著、創元社)などがある。

兼城賢志 (カネシロ・ケンジ)

1986年生まれ。臨床心理士/公認心理師、博士(心理学)。
俳誌『鷹』同人、俳人協会会員。精神科や小児科、学校での臨床実践を経て、現在、上智大学総合人間科学部特別研究員。深層心理学の立場で心理療法の実践を行いながら、発達障害、言語、宗教などのテーマを研究している。訳書に『フロイト技法論集』(岩崎学術出版社、分担訳)、著書に『新興俳句アンソロジー 何が新しかったのか』(ふらんす堂、分担執筆)、『私たちのなかの自然』(左右社、分担執筆)などがある。

宮澤淳滋 (ミヤザワ・ジュンジ)

1978年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
すずのきメンタルケアクリニック在籍、相模女子大学非常勤講師。主に精神科領域において夢を主体とした心理療法を実践し、心を通して開けてくる世界を探究している。著書に『ホロコーストから届く声 非常事態の人のこころ』『私たちのなかの自然』(左右社、分担執筆)、訳書にC・G・ユング『C・G・ユングの夢セミナー パウリの夢』『近代心理学の歴史』『分析心理学セミナー1925 ユング心理学のはじまり』(いずれも創元社、共訳)などがある。

成瀬正憲 (ナルセ・マサノリ)

1980年生まれ。山伏、日知舎代表。東北公益文科大学非常勤講師(文化人類学)。土地の採食文化や手仕事を体得し、再構成して制作・流通させることで、そこに培われた知と営みをあらたに展開するしくみをつくっている。著書に『森ではたらく!27人の27の仕事』(共著、学芸出版社)、『自分の学びの見つけ方』(共著、フィルムアート社)がある。

村田知久 (ムラタ・トモヒサ)

1976年生まれ。臨床心理士/公認心理師。長谷川病院心理療法科在籍。心が持つ可能性や深層を探求し、臨床活動を実践している。専門は、夢や描画、箱庭や色彩などの様々なイメージや表現。著書に『私たちのなかの自然』(左右社)がある。

西山葉子 (ニシヤマ・ヨウコ)

1971年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
現在、長谷川病院心理療法科にて心理臨床に携わる。夢や箱庭、描画、遊び、身体を通して現れるイメージと心の変容について探求している。著書に神田久男編『心理援助アプローチのエッセンス』(樹村房、分担執筆)、 猪股剛編著『ホロコーストから届く声』『私たちのなかの自然』(左右社、分担執筆)など。

ヴォルフガング・ギーゲリッヒ (ギーゲリッヒ、ヴォルフガング)

1942年生まれ。
ドイツ連邦共和国ベルリン市在住。米国ニュージャージー州立大学ドイツ文学の教授職を辞して心理学へ転じ、1976年よりユング派分析家。二十世紀の東西思想の結節点となったエラノス会議にてくり返し演者を務めるところから始まり、現在までユング思想を牽引し続けている。既刊邦訳に『魂と歴史性』『神話と意識』(いずれも日本評論社)、『魂の論理的生命 心理学の厳密な概念に向けて』『ユングの神経症概念』『仏教的心理学と西洋的心理学』(いずれも創元社)、「抑圧された忘却 アウシュヴィッツといわゆる〈記憶の文化〉」(『ホロコーストから届く声』所収、左右社)などがある。また夢分析論の決定版とも言える『夢と共に作業する』(日本評論社)が近刊予定。

長堀加奈子 (ナガホリ・カナコ)

1983年生まれ。臨床心理士/公認心理師。博士(心理学)。上智大学総合人間科学部心理学科特任助教。主に精神科領域と私設心理相談機関において心理臨床に携わっている。集団や他者のなかで個として生きることに関わる心理療法に関心がある。著書に『復職支援の心理療法 グループにおける異質性との出会い』(創元社)、訳書にC・G・ユング『パウリの夢』(共訳、創元社)がある。

河西直歩 (カワニシ・ナホ)

1979年生まれ。臨床心理士/公認心理師。精神科クリニック、精神科病院等の勤務を経て、現在、都内学生相談室にて勤務。心理面接場面にあらわれるイメージや、セラピストの変性意識状態が治療にもたらす影響に関心がある。著書に神田久男編『心理援助アプローチのエッセンス』(樹村房、分担執筆)。

鹿野友章 (カノ・トモアキ)

1985年生まれ。臨床心理士/公認心理師。横浜西口カウンセリングルーム在籍、東京都公立学校スクールカウンセラー、文京学院大学非常勤講師。日々、子どもや大人のクライアントとかかわりながら、心の複雑さと奥深さに驚きつつ、その探求・研究をしている。著書に『ホロコーストから届く声』(左右社、共著)、訳書にC・G・ユング『パウリの夢』(共訳、創元社)などがある。

植田静 (ウエダ・シズカ)

1971年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
獨協医科大学病院小児科・とちぎ子ども医療センター在籍。山王教育研究所スタッフ。難病サバイバーの心理療法をはじめ、さまざまな小児臨床に携わる。音楽家としては2023年夏にインディペンデント・レーベルよりアルバム「a small sun」を発売予定。

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