家族のおわり、心のはじまり

いま、都市に暮らす私たちの心にとって「家族」とはそもそも何だろうか。

書誌情報

定価
3,300 円(税込)
ジャンル
刊行日
2023年03月30日
判型/ページ数
四六判 並製 384ページ
ISBN
978-4-86528-361-7
Cコード
C0011
装幀・装画
細野綾子/装幀

内容紹介

虐待や暴力、学校や職場に通えなくなること、さまざまな身体症状や精神症状。
自分自身の能力や発達への疑問や不安、行き詰まり。
そんな心理臨床の現場で出会うさまざまな課題に、
家族は必ず大きな役割を果たしている。

そもそもいま、この現代の都市生活のなかで、家族とは何なのだろう。
面接室を離れ、故郷や自然、そして自分自身の家族の風景をたずねながら、
臨床心理学者たちが現代社会の心性を探る。
現代ユング派を代表する碩学W・ギーゲリッヒ氏の心理学の精髄を伝える論文「神を信じない時代における神々へのもてなし フィレモン・ファウスト・ユング」、
ならびに本書オリジナル原稿、執筆者たちとの質疑応答「家族を巡って W・ギーゲリッヒとの対話」を掲載。


 

私の記憶のなかには、家族の生成と、家族の崩壊の両方が刻まれている。それは時代の社会状況や経済状況の影響を受けながら進んでいったもののように思うが、その一方でそもそも家族とは、生成と崩壊のあいだにあるようにも感じられる。おそらく私は、世に典型的な生成と喪失を感じているだけで、家族や社会や共同というものは、そのようにいつも生成と崩壊のあいだにあり、いまという現実の取り組みのなかにだけ存在しているのだろう。
(猪股剛「おわりに」より)

 

目次

はじめに 北山純
第1章 家族の傷、「私」の痛み 兼城賢志
第2章 戦後八十年の家族、現代の家族 大録慈
第3章 家族という幻想の終焉、心理学の可能態 猪股剛
第4章 母と私の「忘れた歌」 植田静
第5章 火との対話 火がもたらすもの、もう一つのかたち 村田和久
第6章 神を信じない時代における神々へのもてなし フィレモン・ファウスト・ユング ヴォルフガング・ギーゲリッヒ
第7章 家族を巡って W・ギーゲリッヒとの対話
おわりに 猪股剛

コラム
広島から(西山葉子)
ふるさとと祈り(西山葉子)
白バラ抵抗運動とショル兄妹(北山純)
月山本宮柴燈祭(相樂加奈)
知憩軒(相樂加奈)
東京の家族(宮澤淳滋)

『家族のおわり、心のはじまり』に関する情報

著者プロフィール

猪股剛 (イノマタ・ツヨシ)

1969年生まれ、ユング派分析家、臨床心理士/公認心理師。
帝塚山学院大学准教授。精神科や学校臨床において実践に携わるとともに、アートやパフォーマンスの精神性や、現代の心理の深層を思索することを専門としている。著書に『心理学の時間』(単著、日本評論社)、『遠野物語 遭遇と鎮魂』(共著、岩波書店)、『ホロコーストから届く声 非常事態と人のこころ』『私たちのなかの自然 ユング派心理療法から見た心の人類史』(編著、左右社)、訳書に『近代心理学の歴史』『C・G・ユングの夢セミナー パウリの夢』(いずれもC・G・ユング著、創元社)、『ユングの神経症概念』『仏教的心理学と西洋的心理学』(いずれもW・ギーゲリッヒ著、創元社)などがある。

兼城賢志 (カネシロ・ケンジ)

1986年生まれ。臨床心理士/公認心理師、博士(心理学)。
俳誌『鷹』同人、俳人協会会員。精神科や小児科、学校での臨床実践を経て、現在、上智大学総合人間科学部特別研究員。深層心理学の立場で心理療法の実践を行いながら、発達障害、言語、宗教などのテーマを研究している。訳書に『フロイト技法論集』(岩崎学術出版社、分担訳)、著書に『新興俳句アンソロジー 何が新しかったのか』(ふらんす堂、分担執筆)、『私たちのなかの自然』(左右社、分担執筆)などがある。

大録慈 (オオロク・メグミ)

1979年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
やないクリニック、美南こころの森クリニックに勤務。また児童福祉領域でも、子どもと親の心理臨床に携わっている。生きる上で心が自発的に生み出す物語やイメージに関心をもっている。

植田静 (ウエダ・シズカ)

1971年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
獨協医科大学病院小児科・とちぎ子ども医療センター在籍。山王教育研究所スタッフ。難病サバイバーの心理療法をはじめ、さまざまな小児臨床に携わる。音楽家としては2023年夏にインディペンデント・レーベルよりアルバム「a small sun」を発売予定。

村田知久 (ムラタ・トモヒサ)

1976年生まれ。臨床心理士/公認心理師。長谷川病院心理療法科在籍。心が持つ可能性や深層を探求し、臨床活動を実践している。専門は、夢や描画、箱庭や色彩などの様々なイメージや表現。著書に『私たちのなかの自然』(左右社)がある。

北山純 (キタヤマ・ジュン)

1975年生まれ。臨床心理士/公認心理師。博士(心理学)。
学習院大学文学部心理学科教授。夢や描画、箱庭といったイメージを用いた心理療法に関心を持ちながら、現在は精神科クリニックで心理臨床に携わっている。著書に『高齢者の心理臨床 老いゆくこころへのコミットメント』(創元社)などがある。

西山葉子 (ニシヤマ・ヨウコ)

1971年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
現在、長谷川病院心理療法科にて心理臨床に携わる。夢や箱庭、描画、遊び、身体を通して現れるイメージと心の変容について探求している。著書に神田久男編『心理援助アプローチのエッセンス』(樹村房、分担執筆)、 猪股剛編著『ホロコーストから届く声』『私たちのなかの自然』(左右社、分担執筆)など。

相樂加奈 (サガラ・カナ)

1986年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
仁和医院心理室に在籍。夢や描画、箱庭などのイメージと表現を通して心理臨床の実践をしている。心の奥深さや豊かさに関心があり探索している。

宮澤淳滋 (ミヤザワ・ジュンジ)

1978年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
すずのきメンタルケアクリニック在籍、相模女子大学非常勤講師。主に精神科領域において夢を主体とした心理療法を実践し、心を通して開けてくる世界を探究している。著書に『ホロコーストから届く声 非常事態の人のこころ』『私たちのなかの自然』(左右社、分担執筆)、訳書にC・G・ユング『C・G・ユングの夢セミナー パウリの夢』『近代心理学の歴史』『分析心理学セミナー1925 ユング心理学のはじまり』(いずれも創元社、共訳)などがある。

ヴォルフガング・ギーゲリッヒ (ギーゲリッヒ、ヴォルフガング)

1942年生まれ。
ドイツ連邦共和国ベルリン市在住。米国ニュージャージー州立大学ドイツ文学の教授職を辞して心理学へ転じ、1976年よりユング派分析家。二十世紀の東西思想の結節点となったエラノス会議にてくり返し演者を務めるところから始まり、現在までユング思想を牽引し続けている。既刊邦訳に『魂と歴史性』『神話と意識』(いずれも日本評論社)、『魂の論理的生命 心理学の厳密な概念に向けて』『ユングの神経症概念』『仏教的心理学と西洋的心理学』(いずれも創元社)、「抑圧された忘却 アウシュヴィッツといわゆる〈記憶の文化〉」(『ホロコーストから届く声』所収、左右社)などがある。また夢分析論の決定版とも言える『夢と共に作業する』(日本評論社)が近刊予定。

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