心理療法とはなにか

心理療法とはなにか

現代ユング派心理療法の立場から

猪股剛:編著 兼城賢志:著 植田静:著 西山葉子:著 坂井朋子:著 ジル・スタッサール:著 ヴォルフガング・ギーゲリッヒ:著

心の悩みに、心が感じ、心と心が衝突する。心理療法の本質を考える7つの論考集

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書誌情報

定価
3,300 円(税込)
ジャンル
刊行日
2025年03月27日
判型/ページ数
四六判 並製 336ページ
ISBN
978-4-86528-464-5
Cコード
0011
装幀・装画
細野綾子

内容紹介

はたして心理学とはなんだろうか、心理療法とはいかなる営みなのだろうか。
カウンセリング、セラピーなどの言葉が溢れるいまだからこそ、問い直す必要があるのではないだろうか。

心理学が通常の学術領域とは異なり、みずからを客観的に定義するという方法を持つことはなく、
心が心を見て、心を感じて、心と心の衝突するところに生まれるものだとも言えることに思いを馳せたとき、
心とは、個人の心であると同時に、「集合的なあり方」もしている「魂」であると考えた、
ユング心理学の意味と役割も見えては来ないか──。

臨床に携わる心理療法家たちが、フィールドワークを通じて問い直す。
現代ユング派心理学を代表するW・ギーゲリッヒ氏による、そもそも私たちが個人たることとはいかなることかを論じる重要論考「プリンシピウム・インディヴュデュアティニオスと個性化のプロセス」を収録。


心理療法において直接的な問題の解決に至ることはほとんどない。クライエントは心理療法家のオフィスを訪ねる前に、たいていは自分でさまざまに思い悩み、試行錯誤を重ね、問題を解決しようと努力し、それでも解決できなくて、どうしようもなくなって、心理療法を受けようと決意する。そうしたクライエントに対して心理療法家が示せるものなど、たかが知れている。心理療法家もやはり、クライエントと共にさまざまに思い悩み、試行錯誤を重ね、問題を解決しようと努力するだろうが、それでも解決できず、途方に暮れることしかできない。そして本来の心理療法は、おそらくそのときにはじまる。
「はじめに」より

はじめに
第1章 心理学、あるいは、心理療法とは何か?──物語とイニシエーションと愛 猪股剛
第2章 心理療法と真実 兼城賢志
第3章 みえないこととのかかわり──喪失の底にエコーする論理 植田静
第4章 「ない」から生まれるもの イメージと心理療法をめぐって 西山葉子
第5章 私の心理学ことはじめ──手仕事としての心理療法 坂井朋子
第6章 太陽は受け取ることなく与え続ける ジル・スタッサール(ゲスト)
第7章 プリンシピウム・インディヴュデュアティニオスと個性化のプロセス W・ギーゲリッヒ

コラム
佐渡島フィールドワーク 鬼太鼓とLA PAGODE 植田あや
錬金術と刀鍛冶 村田知久
鬼太鼓を見に行く 宮澤淳滋
読書案内✕3 長堀加奈子、村田知久、星子智志

『心理療法とはなにか』に関する情報

猪股剛 (イノマタ・ツヨシ)

1969年生まれ、ユング派分析家、臨床心理士/公認心理師。
帝塚山学院大学准教授。精神科や学校臨床において実践に携わるとともに、アートやパフォーマンスの精神性や、現代の心理の深層を思索することを専門としている。著書に『心理学の時間』(単著、日本評論社)、『遠野物語 遭遇と鎮魂』(共著、岩波書店)、『ホロコーストから届く声 非常事態の人のこころ』『私たちのなかの自然』『家族のおわり、心のはじまり ユング派心理療法の現場から』(編著、左右社)、訳書に『近代心理学の歴史』『意識と無意識』(いずれもC・G・ユング著、創元社)、『仏教的心理学と西洋的心理学』(W・ギーゲリッヒ著、創元社)『夢と共に作業する』(W・ギーゲリッヒ著、日本評論社)などがある。

兼城賢志 (カネシロ・ケンジ)

1986年生まれ。臨床心理士/公認心理師、博士(心理学)。
俳誌『鷹』同人、俳人協会会員。精神科や小児科、学校での臨床実践を経て、現在、大正大学臨床心理学部助教。深層心理学の立場で心理療法の実践を行いながら、発達障害、言語、宗教などのテーマを研究している。著書に『新興俳句アンソロジー 何が新しかったのか』(ふらんす堂、分担執筆)、『私たちのなかの自然』『家族のおわり、心のはじまり』(左右社、分担執筆)などがある。 1986年生まれ。臨床心理士/公認心理師、博士(心理学)。

植田静 (ウエダ・シズカ)

1971年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
獨協医科大学病院小児科・とちぎ子ども医療センター在籍。山王教育研究所スタッフ。難病サバイバーの心理療法をはじめ、さまざまな小児臨床に携わる。音楽家としては2023年夏にインディペンデント・レーベルよりアルバム「a small sun」を発売予定。

西山葉子 (ニシヤマ・ヨウコ)

1971年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
現在、長谷川病院心理療法科にて心理臨床に携わる。夢や箱庭、描画、遊び、身体を通して現れるイメージと心の変容について探求している。著書に神田久男編『心理援助アプローチのエッセンス』(樹村房、分担執筆)、 猪股剛編著『ホロコーストから届く声』『私たちのなかの自然』(左右社、分担執筆)など。

ヴォルフガング・ギーゲリッヒ (ギーゲリッヒ、ヴォルフガング)

1942年生まれ。
ドイツ連邦共和国ベルリン市在住。米国ニュージャージー州立大学ドイツ文学の教授職を辞して心理学へ転じ、1976年よりユング派分析家。二十世紀の東西思想の結節点となったエラノス会議にてくり返し演者を務めるところから始まり、現在までユング思想を牽引し続けている。既刊邦訳に『魂と歴史性』『神話と意識』(いずれも日本評論社)、『魂の論理的生命 心理学の厳密な概念に向けて』『ユングの神経症概念』『仏教的心理学と西洋的心理学』(いずれも創元社)、「抑圧された忘却 アウシュヴィッツといわゆる〈記憶の文化〉」(『ホロコーストから届く声』所収、左右社)などがある。また夢分析論の決定版とも言える『夢と共に作業する』(日本評論社)が近刊予定。

植田あや (ウエタ・アヤ)

1981年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
児童養護施設・病院・学校での臨床現場を経て、現在くずは心理教育センター、大阪樟蔭女子大学非常勤講師/カウンセリングセンター、福知山淑徳高等学校SCにて勤務。人間の持つ普遍的イメージである元型に関心を寄せ思いを巡らせつつ、日々臨床に取り組んでいる。

坂井朋子 (サカイ・トモコ)

臨床心理士/公認心理師。 医療機関で精神疾患、身体疾患の心理臨床実践を経て、現在は学校臨床に携わりながら、坂井カウンセリングルームで心理療法を実践している。土地の歴史・文化と、イメージ表現による心理療法の関係性に関心を持ち、探究している。

ジル・スタッサール (ジル・スタッサール)

1967年フランス生まれ。 三ツ星レストラン L'Esperanceのシェフ、マーク・ムノー氏の元で料理を学ぶ。美術雑誌『ボザール・マガジン』で編集・執筆しつつ、2005年よりヴァル・ド・マルヌの現代アート美術館 MAC-VAL 内に開設されたレストラン Transversal を立ち上げシェフを務め、その後パレ・ド・トーキョーの屋上に期間限定で現れたレストラン Nomiya のシェフ兼アートディレクターを務めた。2022年より佐渡島で「森と火と食をつなげるラボ La Pagode」をオープン。著書に『600 』(2012年)などがあるほか、グループ展への参加なども多数。

長堀加奈子 (ナガホリ・カナコ)

1983年生まれ。臨床心理士/公認心理師。博士(心理学)。
順天堂大学薬学部講師。主に精神科領域と私設心理相談機関において心理臨床に携わっている。集団や他者のなかで個として生きることに関わる心理療法に関心がある。著書に『復職支援の心理療法 グループにおける異質性との出会い』(創元社)、訳書にC・G・ユング『パウリの夢』(共訳、創元社)などがある。

村田知久 (ムラタ・トモヒサ)

1976年生まれ。臨床心理士/公認心理師。長谷川病院心理療法科在籍。心が持つ可能性や深層を探求し、臨床活動を実践している。専門は、夢や描画、箱庭や色彩などの様々なイメージや表現。著書に『私たちのなかの自然』(左右社)がある。

宮澤淳滋 (ミヤザワ・ジュンジ)

1978年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
新潟青陵大学准教授。主に精神科領域において夢を主体とした心理療法を実践し、心を通して開けてくる世界を探究している。著書に『ホロコーストから届く声』『私たちのなかの自然』(いずれも左右社、分担執筆)、訳書にC・G・ユング『パウリの夢』『近代心理学の歴史』『分析心理学セミナー1925 ユング心理学のはじまり』(いずれも創元社、共訳)などがある。

星子智志 (ホシコ・トモシ)

1982年生まれ。臨床心理士/公認心理師。 精神科デイケアや学校、大学での臨床実践を経て、現在、学校法人嘉悦学園カウンセラー。嘉悦大学、かえつ有明中高等学校にて勤務。夢や描画、箱庭などイメージ表現の持つ豊かな力に関心を持ちながら、思春期・青年期の方たちとの日々の心理臨床に取り組んでいる

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