日本における「私」の姿

日本における「私」の姿

アイデンティティをめぐる心理学

いま、この世界で、「私」を問うことに向き合う

書誌情報

定価
3,300 円(税込)
ジャンル
刊行日
2024年06月30日
判型/ページ数
四六判 並製 412ページ
ISBN
978-4-86528-423-2
Cコード
C0011
装幀・装画
細野綾子/装幀

内容紹介

なぜこんな目にあわなければならないのか、私の人生にどんな意味があるのか、私は何者なのか。
誰しも、「私」をめぐる、そんな問いに苦しみ悩み、忘れられなくなるときがある。
そんなとき、ひとは心理療法にたどり着く。

現代の日本社会、高度に情報化されテクノロジー化したこの世界で、
「私」をめぐる問いに向き合ったとき、どんな支えが見つかるだろう。
心理臨床の現場に携わる8人の、フィールドワークを通じた論考集。
私たちの社会の背景をなす集合的無意識(=魂)について、
現代ユング派を代表する碩学W・ギーゲリッヒ氏が論じる「「個人」と「集合」の対立 心理学の基本的欠陥」、
ならびに本書オリジナル原稿、執筆者たちとの質疑応答「「日本における私の姿」を巡って W・ギーゲリッヒとの対話」を収録。


「この日本という精神風土において、私が私らしく生きて行くことは、どのようにしたら可能なのだろうか。そして、私がこの日本にいながら、自分のあり方を他の誰でもない自分が認めることができて、私が私らしくあるという心の状態を成立させるには、いったい何を知り、何に取り組み、どのように作業していく必要があるのだろうか」。そのことを私たちは、本書で問うている。
(猪股剛「はじめに」より)

 

【週刊読書人】稲垣智則さんによる『日本における「私」の姿』書評が掲載されました

目次

はじめに 猪股剛
第1章 片子として生きる 兼城賢志
第2章 身体に根差すアイデンティティ 平子雪乃
第3章 アイデンティティと世界の再二重化 宮澤淳滋
第4章 解体するアイデンティティと生物としての「私」 長堀加奈子
第5章 私というものの姿 猪股剛
第6章 「個人」と「集合」の対立 心理学の基本的欠陥 ヴォルフガング・ギーゲリッヒ
第7章 「日本における私の姿」を巡って W・ギーゲリッヒとの対話
おわりに 植田あや

コラム
いまに開かれた沖縄の活動(相樂加奈)
盲目の女芸人「瞽女さん」(相樂加奈)
引き継がれる戦後沖縄の活動(相樂加奈)
現代の魂をめぐる相克としての水俣病(北山純)
「異」なるものとの邂逅(北山純)

『日本における「私」の姿』に関する情報

著者プロフィール

猪股剛 (イノマタ・ツヨシ)

1969年生まれ、ユング派分析家、臨床心理士/公認心理師。
帝塚山学院大学准教授。精神科や学校臨床において実践に携わるとともに、アートやパフォーマンスの精神性や、現代の心理の深層を思索することを専門としている。著書に『心理学の時間』(単著、日本評論社)、『遠野物語 遭遇と鎮魂』(共著、岩波書店)、『ホロコーストから届く声 非常事態の人のこころ』『私たちのなかの自然』『家族のおわり、心のはじまり ユング派心理療法の現場から』(編著、左右社)、訳書に『近代心理学の歴史』『意識と無意識』(いずれもC・G・ユング著、創元社)、『仏教的心理学と西洋的心理学』(W・ギーゲリッヒ著、創元社)『夢と共に作業する』(W・ギーゲリッヒ著、日本評論社)などがある。

兼城賢志 (カネシロ・ケンジ)

1986年生まれ。臨床心理士/公認心理師、博士(心理学)。
俳誌『鷹』同人、俳人協会会員。精神科や小児科、学校での臨床実践を経て、現在、大正大学臨床心理学部助教。深層心理学の立場で心理療法の実践を行いながら、発達障害、言語、宗教などのテーマを研究している。著書に『新興俳句アンソロジー 何が新しかったのか』(ふらんす堂、分担執筆)、『私たちのなかの自然』『家族のおわり、心のはじまり』(左右社、分担執筆)などがある。 1986年生まれ。臨床心理士/公認心理師、博士(心理学)。

平子雪乃 (タイラコ・ユキノ)

公認心理師、臨床心理士。
杏林大学保健学部臨床心理学科講師、東京慈恵会医科大学附属病院麻酔科学講座研究技術員。身体症状と心理的問題との関係に関心を持ち、これまでペインクリニック、頭痛専門クリニック、耳鼻咽喉科専門病院にて身体症状を抱える方への支援に携わってきた。現在は主に慢性疼痛に対する認知行動療法と多職種協働をテーマに臨床実践と研究を行っている。

宮澤淳滋 (ミヤザワ・ジュンジ)

1978年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
新潟青陵大学准教授。主に精神科領域において夢を主体とした心理療法を実践し、心を通して開けてくる世界を探究している。著書に『ホロコーストから届く声』『私たちのなかの自然』(いずれも左右社、分担執筆)、訳書にC・G・ユング『パウリの夢』『近代心理学の歴史』『分析心理学セミナー1925 ユング心理学のはじまり』(いずれも創元社、共訳)などがある。

長堀加奈子 (ナガホリ・カナコ)

1983年生まれ。臨床心理士/公認心理師。博士(心理学)。
順天堂大学薬学部講師。主に精神科領域と私設心理相談機関において心理臨床に携わっている。集団や他者のなかで個として生きることに関わる心理療法に関心がある。著書に『復職支援の心理療法 グループにおける異質性との出会い』(創元社)、訳書にC・G・ユング『パウリの夢』(共訳、創元社)などがある。

相樂加奈 (サガラ・カナ)

1986年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
仁和医院心理室・四谷こころの相談室に在籍。夢や描画、箱庭などのイメージと表現を通して心理臨床の実践をしている。心の奥深さや豊かさに関心があり探索している。著者に猪股剛編著『家族のおわり、心のはじまり』(左右社、分担執筆)がある。

北山純 (キタヤマ・ジュン)

1975年生まれ。臨床心理士/公認心理師。博士(心理学)。
学習院大学文学部心理学科教授。夢や描画、箱庭といったイメージを用いた心理療法に関心を持ちながら、現在は精神科クリニックで心理臨床に携わっている。著書に『高齢者の心理臨床 老いゆくこころへのコミットメント』(創元社)などがある。

植田あや (ウエタ・アヤ)

1981年生まれ。臨床心理士/公認心理師。
児童養護施設・病院・学校での臨床現場を経て、現在くずは心理教育センター、大阪樟蔭女子大学非常勤講師/カウンセリングセンター、福知山淑徳高等学校SCにて勤務。人間の持つ普遍的イメージである元型に関心を寄せ思いを巡らせつつ、日々臨床に取り組んでいる。

ヴォルフガング・ギーゲリッヒ (ギーゲリッヒ、ヴォルフガング)

1942年生まれ。
ドイツ連邦共和国ベルリン市在住。米国ニュージャージー州立大学ドイツ文学の教授職を辞して心理学へ転じ、1976年よりユング派分析家。二十世紀の東西思想の結節点となったエラノス会議にてくり返し演者を務めるところから始まり、現在までユング思想を牽引し続けている。既刊邦訳に『魂と歴史性』『神話と意識』(いずれも日本評論社)、『魂の論理的生命 心理学の厳密な概念に向けて』『ユングの神経症概念』『仏教的心理学と西洋的心理学』(いずれも創元社)、「抑圧された忘却 アウシュヴィッツといわゆる〈記憶の文化〉」(『ホロコーストから届く声』所収、左右社)などがある。また夢分析論の決定版とも言える『夢と共に作業する』(日本評論社)が近刊予定。

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