管啓次郎詩集 数と夕方

管啓次郎詩集 数と夕方

  • 著者:管啓次郎
  • 装幀:祖父江慎
  • 定価:本体定価:本体2400円+税円+税
  • 文庫版変形/320ページ
  • 978-4-86528-187-3

78 57 37 意味なき数字が脳裏で明滅する 海峡を行く白い小型フェリーに 夕方の黄金の光があたって美しい 息子がこっちを見て手をふっているのもわかる 海岸にはアフリカ原産種の大木の赤い花が咲いて それは何かを祝っているようだ (「数と夕方」より) われわれの生のすべての瞬間がそのときその場での地形と気象に左右されているのは、思えば驚くべきことだ。だがそれに驚きつづける人は、いったいどこにいるのだろう。 (略) 生に耐えられなくなった者たちは叫びを上げる。その叫びがつぶやきやささやきや沈黙というかたちをとる者もいる。地形と気象に対する反応が、その背景をなす。ぼくは沈黙に似た無音の情景を、文字で構成しようとした。 (あとがきより)


「この季節だけ集まる独特なイカが/まるで鳥のように海中を泳いでいる」
流動する世界のなかで、土地からも時間からも自由になる。
一度遠景に退いた風景が、ふたたびくっきりと存在しはじめる。
詩人管啓次郎の新たな展開を告げる待望の第5詩集。
祖父江慎装幀、ポケットの底に、いつも詩集を。


目次

四川
移住論
海辺へ
数と夕方
Red River Valley
かかしの神
淡海へ
流域論
安土、水郷
ヨハネ挽歌
佐渡 after Dazai
ケベック少年
ブレーメン革命
春と修羅 modified
からす連作
花の科学
十二月が真夏の国では
眠り踊りのはじまり
「遠いアトラス」より
リスボン
フジツボのように
ワリス・ノカンへの手紙
午前三時の川

あとがき

管啓次郎(すが・けいじろう)

1958年生まれ。地・水・火・風の四大元素を主題とした詩を書いてきた。これまでの詩集に『Agend’Ars』『島の水、島の火』『海に降る雨』『時制論』の4部作(いずれも左右社、2010~13年)。この連作からの撰集として、クリスティナ・ラスコン+南映子によるスペイン語訳がメキシコで出版されている(Agend’Ars, Cuadrivio, 2015)。2010年1月にはスタンフォード大学、2012年8月にはスロヴェニア、2013年9月にはセルビア各地、2014年9月にはアルバニア、11月にはリトアニア、2016年9月にはコソヴォ、11月にはエクアドル、2017年5月にはスペイン、9月にはオーストラリアで、招待朗読を行った。他に暁方ミセイ+石田瑞穂との連作『遠いアトラス』(電子書籍、マイナビ出版、2014年)、暁方ミセイ+大崎清夏+石田瑞穂との連作『地形と気象』(左右社、2016年)。批評的エッセーとしてはデビュー作『コロンブスの犬』(河出文庫、2011年)にはじまり『オムニフォン』(岩波書店、2005年)、『斜線の旅』(インスクリプト、2010年、読売文学賞)、『ストレンジオグラフィ』(左右社、2015年)、『The Dog Book』(NOHARA、2016年)などがある。さらにルクレジオ『ラガ』(岩波書店、2016年)、マトゥラーナとバレーラ『知恵の樹』(ちくま学芸文庫、1997年)、ベンダー『レモンケーキの独特のさびしさ』(KADOKAWA、2016年)など、フランス語、スペイン語、英語からの翻訳多数。明治大学理工学研究科PAC(場所、芸術、意識)プログラム教授。