ストレンジオグラフィ Strangeography|管啓次郎
心はさまざまな土地によってできている。
土地と土地のその並びは、きみだけのもの。
それがストレンジオグラフィ。
すべての親密なストレンジャーたちのために。
「いまいるここ」と自分の体験の枠すら越えた「いつかのどこか」は、奇妙なモザイクとなって、どこにも実在しない地形と風土を現出することになるだろう。かねてからぼくはそれをstrangeographyと呼んできた。奇妙な異邦の地理学。そして同時に、きみ自身をstrangerとするような非情な地理学だ。土地と土地とが見慣れないむすびつき方をし、現実と想像が(物語が、イメージが)相互に挑発し合うような地誌のことだ。(本文より)
すが・けいじろう 明治大学教授。比較文学者、批評家、翻訳家。著書に『本は読めないものだから心配するな』『Agend’Ars』『島の水、島の火Agend’Ars2』『海に降る雨Agend’Ars3』『時制論Agend’Ars4』『コヨーテ読書』『オムニフォン』『ホノルル、ブラジル』など。
書評・記事
望星 2014年5月号 BOOKS 沢渡曜